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2016年03月31日

現在市場に出回っている食用葡萄のほとんどは種の無い葡萄です。これはジベレリンというホルモン剤を葡萄の開花時の細胞分裂の時と、花の咲いた後の果粒肥大時に房をホルモン液に浸す事で種を無くし、実を肥大化させる作用があるからです。ジベレリンをぶどうの花に浸漬することによってぶどうを種無しにする事は、昭和30年代の初頭、日本が世界にさきがけて開発した技術です。この技術はぶどうの種無しを目的とした研究の成果としてではなく、偶然の発見によるものでした。イネ馬鹿苗病の研究の途中で、病原となるカビのなかにイネを徒長させる物質が含まれることが明らかになり、ぶどう(デラウエア)の房の粒同士が詰まり過ぎないよう房の軸が伸びる事を期待してジベレリンを作用させたところ、種無しになる事が発見されたそうです。現在では、このカビを培養して大量にジベレリン剤が生産されるようになりました。その後、色んなぶどうの品種に対して、ジベレリンによる種無し化の研究がなされて現在に至っています。

ジベレリン処理をして種無しのぶどうにする事は私たち農家にとって、とても労力をつかう大変な手間です。ジベレリンの入ったコップに何千房というぶどうの花を一つ一つ浸す作業があり、その適期は限られた期間で天候にも大きく左右されます。最近では種が抜けにくいために、BA液剤、スプレイトマイシン剤、フルメット剤などの抗菌剤やホルモン剤を混用するようになりました。その後、一粒一粒が大きくなりそのままだと粒同士が押し合いになり裂果の原因になるので、また一房一房、粒をはさみで抜き取り、見栄えが良くなるように形を整えてゆきます。これは気の遠くなるようなとても大変な作業ですが、高齢になった生産者も毎年この作業を繰り返しています。

なぜここまでして種なしのぶどうにするのか。これは、大多数の消費者が種が無くて食べやすいぶどうを好み、選ぶという事実で、生産者も種を無くす事で収穫が早まり、台風の被害を避けたり、お盆のお供え物の需要に合わせ出荷できるためでもあります。今では消費者も生産者も種の無い葡萄が「当たり前」なのです。

僕は人間の都合で種を無くし自然の摂理に反するこの「当たり前」に違和感と疑問を感じます。

食べやすさという消費者のニーズに応えるための生産者の負担は大きなものです。自然に対して人間が行ったことは全て人間に帰ってくると考えていますし、どうやらこれは事実です。今世の中で起きているほとんどの問題も自然を敬う事を忘れ、利便性や経済性を追い求めた結果ではないでしょうか。想像すること、知る事、そのモノがどうやって作られているのか、生活の中で何を選ぶかで世界は変わっていくと思います。話しが大袈裟になってしまいました。。。

自然のまま育った葡萄は人間が形を整えるよりも遥かに完璧で美しく、実の中に種を育みながら時間をかけてゆっくりと熟したその果実は、種の無い葡萄には無い「美味しさ」が在ると感じます。種の有る葡萄は価値がなく、売れないと言われる事もありますが、僕は種のある葡萄にこそ価値があると思うので「種あり」で葡萄を育てます。種は未来へ残していくための命の源なのだから

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